ESCO事業の基礎知識

ESCO事業とは、エナジー・サービス・カンパニー(Energy Service Company)の略称です。
オフィス・一般商業ビルや工場、病院、学校、庁舎などの建物や施設での省エネルギー化に必要なサービスを包括的に提供することで、顧客の利益と地球環境の保全に貢献する事業のことを指します。
第2次石油ショック後の1970年代後半にアメリカで誕生した事業で、欧米では省エネ推進手法の中でも中心的な位置づけとなっています。

 

ESCO事業の構成

また、この事業は複数のサービスから構成されますが、一般社団法人ESCO・エネルギーマネジメント推進協議会によると、主に「1:エネルギー診断にもとづく省エネルギー提案」、「2:提案実現のための省エネルギー設計および施工」、「3:導入設備の保守」、「4:エネルギー供給に関するサービス」、「5:事業資金アレンジ」、「6:省エネルギー効果の保証」、「7:省エネルギー効果の計測と徹底した検証」、「8:計測・検証に基づく改善提案」という8つのサービスの組み合わせと定義されています。
このように、省エネルギー改修に関係する全てのサービスが包括的に提供されるのが、一般的な省エネルギー改修工事との大きな違いです。

 

顧客は新たな費用を負担することなく省エネを実現可能

また、この事業では、省エネルギー改修に必要となった建設費や金利、事業者の経費などの費用は、実際に削減できた光熱水費で賄うことを基本としています。
そのため、顧客は新たな費用を負担することなく省エネを実現可能です。
さらに、契約期間終了後の光熱水費の削減分は、全て顧客の顧客の利益となるというメリットがあります。

 

省エネの効果が保証される

加えて、省エネの効果が保証されるのもESCO事業の特徴です。
仮に、運用開始後に期待される省エネ効果が発揮されずに顧客が損失を被る状況に陥った場合は、その損失分を事業者が補填します。
このような契約形態は、一般的にパフォーマンス契約と呼ばれており、万が一省エネ効果が得られなかった場合でも顧客の利益が保証されます。
パフォーマンス契約を結ぶということは、事業者にとっては保証のリスクを背負うということなので、事業者は各顧客に最適な技術提供をすることがリスク軽減につながります。
これにより、顧客は保証された省エネ効果を確実に得ることが可能です。
このように、顧客に合った技術を提供することは、事業者にとっても顧客にとっても大きなメリットとなりますが、これがこの事業の最大の特徴となります。

 

パフォーマンス契約の中で保証された省エネ効果を明らかにすることを目的に、徹底した計測・検証が実施される

なお、通常の省エネルギー改修工事の場合、設計・工事・設備運転が別々の契約となることがほとんどです。
そのため、通常の改修工事を行った場合、省エネ効果の保証を得ることは難しく、確実に効果を得ることができません。
また、一般的な改修工事の場合、工事後の計測や検証が行われないため、徐々に効果が低下していくことが懸念されます。
しかし、ESCO事業では、パフォーマンス契約の中で保証された省エネ効果を明らかにすることを目的に、徹底した計測・検証が実施されます。
効果の計測と検証が定期的に行われることにより、期待される省エネ効果を継続して得ることが可能です。

 

ESCO事業の契約形態

また、ESCO事業の契約形態は大きく2種類に分けられます。

 

●ギャランティード・セイビングス契約

ひとつ目の契約形態は、ギャランティード・セイビングス契約です。
これは、顧客が省エネルギー改修に必要な初期費用を負担する契約形態で、顧客は削減できた光熱水費から経費として事業者に支払います。
ギャランティード・セイビングス契約では、顧客が資金調達を行わなければいけませんが、顧客は省エネルギー設備を自己資産にすることが可能です。
また、契約期間も自由に設定できるという特徴もあります。

 

●シェアード・セイビングス契約

もう一つの契約形態は、シェアード・セイビングス契約です。
これは、省エネルギー改修に必要な資金調達を事業者が行い、顧客は光熱水費の削減分から事業者に経費・改修工事費・金利を支払います。
シェアード・セイビングス契約は、資金調達を事業者が行うため、顧客には金融上のリスクが一切ありません。
また、省エネルギー設備の所有者は事業者となるため、設備のオフバランス化を図ることが可能です。
しかし、シェアード・セイビングス契約では9~15年の長期契約となるのが一般的で、ギャランティード・セイビングス契約と比べると顧客の負担額が大きくなるというデメリットがあります。

 

まとめ

現在、日本国内のエネルギー消費は年々増加傾向にありますが、省エネルギー化を実現するためには一定の資金力が必要です。
そのため、多くの経営者が十分な省エネルギーに対する十分な取り組みができていないのが現状です。
しかし、実際に削減できた光熱水費で全ての費用を賄えるESCO事業であれば、新たな費用負担を必要としません。
加えて、省エネルギー化に関する全てのサービスが包括的に受けられるため、一般的な省エネルギー改修工事よりも、効果的な省エネルギー化が実現可能です。
このような特徴があることから、ESCO事業は今後の省エネ推進に大きな役割を果たしていくことが予想されています。

参考>>ESCO事業を行うエスコシステムズ人事担当者のブログです!!
 

最終更新日 2025年7月19日 by errestauro